娘が生まれて半年が過ぎた頃、生まれて初めて「離乳食」なるものを作ることになった。おちょこ一杯分のお米を十倍ほどの水で炊き、すり鉢ですり潰して小さなお匙に載せて小さな口に運ぶ。何やら神妙な顔をして、それを口に含みごっくんとする姿は、これから生きていくための儀式のようだった。
今日は口をへの字に結んで食べようとしなかった、食べ物で遊んでばかりで全然進まない、食事を終えると決まって洗濯ものが山のようになる、お野菜を全く食べてくれない・・・周りのお母さんたちと交わす会話、あの頃は一日中ごはんのことばかり考えていたような気がする。抱っこして買い物に行き、眠っている隙に台所へ立ち、目を覚ましたらオムツを替え、お膳を整える。そうして、器から掬い、いざ口に運んだ瞬間にほかほかのおかゆを載せたお匙がその小さな手で払われる、そんな事は日常茶飯事、それでも、ごはん、とにもかくにも健やかに育ってほしい、その一心だったのだと思う。
ごはんを食べるようになった頃に出会った赤ちゃんのほっぺのようにふっくらすべすべとした白釉の飯碗。回数を重ねる度に少しずつ表情を変えるごはんの器は、小さな娘との暮らしの真ん中にいつもあった。
ぽってりとした厚みがありながら、手にとってみると軽い。優しい生成色をしたこども碗は東京在住の陶芸家・須藤拓也さんの手によるもの。色も形も優しく柔らかい。低めの高台には全体に釉薬が施され、どこを触ってもすべすべふっくら、優しく柔らかいのです。あれから9年、滅多に器を割らない娘が唯一割ってしまったのもこの器。それでも、また同じのがほしい、と言ったのもこの器。ごはんの回数を重ねる度に、表面に入った貫入が少しずつ染まって、ゆっくりと育って行くことでしょう。こどもと一緒に。
・白釉こども碗 ¥2,500(+税) size : 約φ10.8 x H4.5cm