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いまここ
もう12年も前になるだろうか。その頃に、いつも訪れていたウェブサイトがあった。

毎朝、だいたい決まった時刻にその人の手書きの文字で文章がアップロードされる。

その手書きの文字を見る度に、その言葉を読む度に、気持ちがまっすぐに、穏やかに

なってゆくような気がした。離れた場所にいても、その時々の気持ちの変化や感じて

いることが、手書きで綴られた手紙のように少しだけ温度を持ってこちら側に届く。



いつかこんな風に、誰かの気持ちをまっすぐに、穏やかにすることができたら、と

思った。今はもうそのサイトは変わってしまって、手書きの文字を目にすることは

なくなったけれど、その人の仕事や考え方は今も変わらず、丁寧でまっすぐなまま。

日々の暮らしの中で、ひょっとすればこぼれ落ちてしまいそうなものごとを、丁寧

に拾い上げて、そっと相手に手渡ししているような、そんな文章を書き続けている。



逃げも隠れもしない、いまここにあることを自らの責任において引き受けている人

の強くて優しい言葉は心の奥底まで沈んで、その後の私の仕事や暮らし方を支えて

くれている。



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牡鹿半島から届いたお魚の形のたわし。大漁旗風のパッケージの裏側には、素材や

用途、価格といった商品説明の他に、knitter(編み手)のお名前がめいめいの方法

で記されている。手書きあり、ハンコあり、ステッカーあり、いろんな形のしるし

を見ていたら、くだんのウェブサイトの手書き文字が思い出された。







作り手のお母さんたちは皆、自身の暮らしの中から生み出されたものごとを、自らの

責任において、使い手に届けようとしている。編み上がったお魚と、それを手にした

何処かの誰かの暮らしの中の喜びを思い浮かべながら。その情景がやはり少し温度を

もってこちら側に伝わってくるから、手にする度に私はまっすぐで、穏やかな気持ち

になる。



: : :



3.11から明日で一年。



いまここにいる自分と、その暮らしに真摯に向き合うこと。責任を引き受けること。



そうしたら、いつか、誰かの気持ちをまっすぐに、穏やかにすることができるかも

しれない、と思う。